令和5年度(2023)秋期

 龍は鱗蟲(鱗のある動物)の長。雨を司る精霊とされ、九種の動物に似た特徴を持ち、吉祥をもたらす霊獣として崇められてきました。その原型は神獣「夔」であるともいわれ、古代中国の殷・周時代の青銅器の装飾に早くもその姿が表現されています。文様として三千以上の歴史があり、特に五爪を持つ龍は明・清の時代には皇帝の象徴とされ、最高の権威を表すものでした。
 我が国日本でも、美術工芸や建築装飾に、龍の図象は古くから用いられてきました。ある時は権力や霊威の象徴として、またある時は福を呼ぶ吉祥文様として。
 勿論、九谷焼とてその例外ではありません。雲間を泳ぐように、嵐を呼ぶように、様々な姿の龍が器を彩ってきました。誰もがそれを知っているのに、誰もそれを見たことがないーそんな不思議な存在を、陶技を持って表現した再興九谷・江沼諸窯=加賀諸窯の陶工達、その作品を今回の展示でご紹介します。

松山窯 青手龍図輪花皿
初代中村秋塘 赤絵金襴聖龍図花瓶
九谷壽楽窯 染付雲龍図碗
浅井一毫窯 赤絵雲龍図盃(五)
中村翠恒 龍 置物
浅井一毫 雨龍図 盃