令和5年度(2023)冬期

 絵付と並び器胎成形にも卓越した再興九谷・江沼諸窯。今回は花を生ける器を中心に展示します。
 陶芸の基本素材である粘土は、普通柔らかい状態で成形されます。なかでも一輪挿しや花瓶等の立ち上がった形の場合、重力に逆らって形を上方に向かって作り上げていかなければなりません。特にロクロ成形の場合、粘土は自転しているために絶えず遠心力が発生し、基本的には外に向かって広がろうとします。その力にある時は従い膨らませ、またある時は抗い窄めることによって思い通りの形を造り出すためには相当な技量を必要とします。更に、陶芸の宿命として、乾燥及び焼成中におこる収縮と、それに伴う変形や破損の恐れも考慮しなければなりません。そうして生み出された形に絵付けを中心とした様々な装飾が施されました。
 花を生ける器に何故これほどの装飾が施されたのでしょう。それを作り出した陶工たちは既に亡く、その問いは謎のままです
 ―私に花を生けてごらん―
 本展示をご覧になる全ての方に、作品達は、そう語りかけているのかもしれません。

九谷本窯
赤絵金襴手花鳥図筒形花瓶
梶谷竹塘
柘榴画替花瓶
中村翠恒
海老文花瓶
井上陶源
高砂華入
中村翠恒
果実文花入
北出不二雄
梨地丸紋一輪生