平成24年度(2012)秋期

九谷焼の功労者 永楽和全

平成24年10月3日(水)~平成25年2月15日(金)

 茶道の三千家(表・裏・武者小路)から、茶道具制作に選ばれた道具師に千家十識があります。西村家は代々善五郎を襲名し、土風炉師として活躍していましたが、十代以降は永楽家に改姓し、土風炉師に加えて茶陶も制作しました。主に中国赤絵や金襴手写しを手掛け、中でも十二代和全(文政六年1823~明治二十九年1896)は名工の誉が高く、幕末に衰退していた九谷焼を復興するため、九谷本窯を直営していた大聖寺藩に招かれました。
 山代温泉の春日山に移り、木崎万亀の窯に滞在しながら、九谷本窯(現在の九谷焼窯跡展示館)や松山窯で指導し、九谷焼に色絵や金襴手・交趾・仁清写しなどの新しい様式を伝えました。特に金襴手は、時代の好みにも合致して評判が高く、今日九谷永楽といえば金襴手を指すまでになっています。また加賀には三年ほどの滞在でしたが、木崎万亀や大蔵壽楽・滝口加全などの名工が育っています。
 永楽和全の活躍もあって、九谷焼は日本を代表する近代工芸品となり、その伝統の幅を広げて今日に及んでいます。
 永楽和全とその後継者の作品を通して、九谷焼の振興に大きな役割を果たした功績を讃えたいと思います。

金襴手雲鶴文馬上盃
(石川県九谷焼美術館蔵)